こんにちは。エルフペットクリニック院長の猪毛尾です。
今回は、「食道内異物」についてお話しします。
食道内異物とは、読んで字の如く『食道内に異物が詰まった状態』の事を言います。
誤飲でよく起こるのは、胃内・小腸内の異物です。
これらは嘔吐を引き起こす事が多く、早く対応すれば内視鏡での摘出や開腹下の手術で改善する事がほとんどです。
しかし、食道内の異物は、ヨダレが多い、吐き気があるけど嘔吐は無い、飲み込むのが辛そう、食欲が無い、吐出(食べたものがそのまま出てくる)など様々な症状を引き起こします。
食道内を塞いでしまうのは、ジャーキーなどの犬用おやつ製品が代表的で、その他には骨や釣り針、リンゴ、ひずめ、牛すじなどがあります。
これは、食道内にササミのジャーキーが詰まった状態のレントゲン写真です。
犬は習性的に食べ物を丸呑みする傾向があるので、猫よりも圧倒的に食道内異物の発生率が高いのです。
食道内に異物が詰まると、詰まった部分の食道粘膜が腫れ、炎症を起こし、血行障害から壊死を引き起こし、最終的には食道に穴が開いてしまいます。
こうなると、気胸になって呼吸できなくなり、急激に悪化して亡くなる場合があります。
食道内異物の治療は、内視鏡下あるいは外科的な除去です。
内視鏡下の摘出は、このように行われます。
これが食道内の異物で
このように鉗子で摘出します。
これが摘出後の食道粘膜です。
赤く腫れ、だだれて出血しています。
食道粘膜が損傷を受けることにより、治療後1〜2週間ごろに食道狭窄を引き起こすこともあります。
そのため、異物摘出後も投薬が必要になります。
このように、食道内異物は合併症もあるため、早期の処置が必要ですし、処置後も注意が必要です。
食べ物が詰まったことがこんな大ごとになるなんて、飼い主様には想像できないかもしれません。
しかし、食道内に異物が詰まることは、とても危険なことなのです。
ご理解いただき、おやつなどは十分に注意して与えてください。
エルフペットクリニックでは、内視鏡の検査や処置を行なっています。
気になることがあれば、些細なことでもご相談ください。