こんにちは。院長の猪毛尾です。
今回は、犬の乳腺腫瘍についてお話ししようと思います。
乳腺腫瘍と診断されたワンちゃんの飼い主様の多くが「おなかにできものがある」と言って来院されます。
「乳腺なのにおなか?」
と思われるかもしれませんが、ワンちゃんの乳腺は人とは違い、ワキの付け根あたりの胸から陰部近くのおなかまで、おなか側全体に広がっています。
人と比べると、とても広いですね。
というわけで、乳腺腫瘍は胸にできることもあれば、おなかにできることもあるのです。
「乳腺腫瘍ということはガン?」
と思われるかもしれませんが、「腫瘍」とは「ガン(=悪性腫瘍)」と「良性腫瘍」の総称なので、腫瘍があっても必ずしもガンというわけではありません。
犬の乳腺腫瘍は中齢期の避妊していないメスでもっとも一般的な腫瘍で、良性腫瘍と悪性腫瘍が1:1と言われています。
しかし、この比率は年齢や犬種、腫瘍のサイズでも変わります。
大型犬ではガンの割合が多くなります。
また、腫瘍のサイズが大きくなると、ガンの可能性が高くなります。
乳腺腫瘍は、卵巣からのホルモンの影響があるのではないかと言われています。
実際、乳腺腫瘍の発生率は、避妊手術をしていない犬と比べて
- 初回発情の前に避妊手術を実施した犬では0.5%
- 二回目の発情前に手術を行った犬では8%
- 二回目の発情後に手術を行った犬では26%
と言われています。
そのため、早期の避妊手術は乳腺腫瘍の予防にもなるのです。
良性の乳腺腫瘍であっても、大きくなると痛みが出てきたり、腫瘍表面の皮膚が破れて自潰すると、臭いや分泌液により舐め壊したりして、生活に不都合が出ることがあります。
大きくなった乳腺腫瘍
皮膚が破れた乳腺腫瘍
良性腫瘍でも、時間が経ち大きくなるにつれて悪性転化を起こしうると考えられています。
もし、乳腺腫瘍ができてしまっても、早めの対応でワンちゃんの負担を最小限にできます。
大きな乳腺腫瘍や多発する乳腺腫瘍は切除範囲も大きくなり、身体への負担も大きくなりますので、できものに気づいたら、なるべく早めにご来院ください。